ちゅーねん漂流記

自分らしく生きようともがいているある中年のブログ

無職なので六本木から家まで歩いて帰ってみました

 

旅の報告ほかいろいろと話をするため、社長をやっている昔の先輩と飲むことになった。

 

 

待ち合わせ場所は六本木。

シャレオツ地域の代表格であるRoppongiである。

 

外人慣れした私にぴったりのチョイスではないか!

 

 

時間は夜の10時。

 

働いている皆さんが帰る時間に駅に到着だ。

駅では忘年会の解散風景をいくつか目にする。

「良いお年を~」なんて言って別れていく。

 

 

そして指定された店に。

 

 

そこはとあるビルの3階にあるかなり高級そうなスナック風バー。

 

その重厚なドアは無言で「犬と無職立ち入るべからず」と威圧してくる。

 

ぐぐ。

 

上等じゃねーかコラ!

 

ドアの前で一瞬ひるんで帰りたくなったが、ここで引き下がっては昔の上海の中国人に申し訳が立たない。

 

勇気を出して中へ。

 

 

「〇田さん、少し遅れるそうで先に飲んでてって」ということでカウンターに通される。

ではビールを。

 

その店は常連客っぽい人たちで賑わっており、すぐ両隣にも2人組の客がいる。

高そうなスーツをビシッと着こんだ見た感じ社長ふうの人たちやベンチャー企業か何かでひと財産築いたような金持ちっぽい人たち。

 

そして私はそこらに買い物にでも行くような私服である。下はジーパン。

 

ちなみにパンツは使い古されたヨレヨレのユニクロのやつで、六本木の高級娼婦に声をかけられたとしても一夜を共にすることもできない。

 

 

しかしなんだこの、もの凄い居心地の悪さは。

 

 

こんな時はどうやって待てば良い?

どうすればこれ以上この店で浮かなくてすむ?

 

混乱したアタマで必死に考えるが良いアイデアが浮かばない。

 

結局注がれたビールをひたすら凝視して不気味なオーラを全身から発しつつ先輩が来るのを待つ。

「何故六本木なんかにしたのだ。そもそもこんな街は大っ嫌いなんだよ俺は。新橋の赤ちょうちんでいいじゃねーか」と恨み節をつぶやきながら。

 

 

30分後

 

「悪い悪い遅れて! 待たせちゃったな」

 

はい、子猫のように震えながら待ってました。

 

 

先輩は涙目になっている私にハンカチを渡しながら、「前にもこの店連れて来ただろう」と言う。

 

毎日のように飲んだくれていたからなのか全く記憶にない。

 

普通に来たことがあったなんて。

 

その時私は、どういう立ち振る舞いをしていたのだろうか。

 

 

 

近況やこれからのことなどを話したのち、オーナーママを含めてワインの話題に。

 

 

ピノノワールがどうだソービニオンがどうだアクディテがどうだマチェがどうだボルドーはカリフォルニアだナマムギナmゴメンガ;ェkジャl

 

 

呪文?

 

スペイン語より理解不能なのですが?

 

 

「〇田さん:俺も前は全然知らなかったが勉強して詳しくなったのだ。お前もこれから努力して少しは話せるようにならなきゃダメだぞ」

 

「俺:はい!」

 

ワインは赤と白、甘い甘くないの区分で人生切り抜けられると思っていたが世の中そうもいかないらしい。

 

ホッピーなら白か黒でいいのに。

ハイボールなら濃いめか薄めでいいのに。

 

勉強することってたくさんあるね。

 

 

終電も完全になくなった深夜1時、会はお開きとなった。

ご馳走さまでしたと、先輩が乗ったタクシーを見送る。

 

 

さて、俺も帰ろう。

徒歩で。

 

 

今の私に貴族みたいにタクシーを使って優雅に帰る資格も余裕も、ない。

東京タワーを横目に新橋を抜け日本橋を抜けてテクテク歩いて家に向かう。

 

 

 

不思議なことに、なぜか見るもの全てが新鮮だ。

 

12月末深夜2時の東京、頑張って働いている人やまだ飲んでいる人、普通に散歩している人もいる。

どこもかしこも明るく、街は息づいている。

 

この東京でずっと暮らして仕事をしていたのに、はじめて見る光景に思える。

 

 

今までの私は、12月といえば毎日毎日爆飲をしてなんとかタクシーに乗り込み、乗った瞬間に爆睡して家まで帰り、翌朝完全な二日酔いとなり死ぬ思いで吐きながら出勤するの繰り返しだった。

 

そうこうしているうちに12月が終わる。

 

街を見ることもなかった。

 

 

今まで俺は何をしてきたんだろう?

 

自分が住んでいる街もよくわかってない。

 

 

 

寒空の中を震えて歩きながら無性に切なくなった。